さて、ここで来る7月に発売される新しいCDのことに触れておこう。去年の夏、コペンハーゲンジャズフェスティバルにて、盟友ニルス・デヴィッドセン(B)アナス・モーンセン(DS)と演奏し、同時にレコーディングを行った。タイトルは「BIHAIND THE INSIDE」。ヨーロッパではどこぞのサイトからmp3で販売予定とのこと。このことは詳しい情報が入り次第お知らせするが、日本では、AIRPLAIN LABELからの発売となった。色々な事情が重なり、デンマークから二人のミュージシャンを呼ぶことができなかったが、7月3日、新宿ピットインにて、CD発売記念ライブを執り行う。メンバーは、吉野弘志(B)、芳垣安洋(DS),ご存じのごとく、両氏共斯界の手練れであり、今回のCDがフリーフォームであるため、デンマーク勢のサウンドをCDから、日本勢のサウンドをライブ演奏から聴くことも一興かと思われる。同時に四冊目の本も当日に発売予定だ。これは今までの自伝的エッセイの枠を超えた、大人のマンガを文章にしたような、しかも濃密で不思議な物語である。さて皆さん、この日本勢トリオ編成は、日本ジャズ界の歴史長しといえども、多分初共演ではないだろうか。まずはお二人の先輩に囲まれて、緊張して眉毛が逆への字に転換している我が崩れ緒形拳のような顔を見るだけでも、更に一興ではあるまいか。皆様のご来場、ずずいとお待ち申し上げておりまする。
おっと、日記を更新しようと思ったが、上段にあるとおり、7月の宣伝文を載せているため、ページを更新できない。やむをえず、ここに新しい内容を記すこととす。本日は小用あり、池袋に久しぶりに赴いたが、地下鉄の改札を出たとたん、おのぼりさん状態となる。あそこはある意味で魔窟である。地下道が色々な方向に永遠に続いているような錯覚を起こさせる。人々の無為な購買意欲と、何やら忙しげな勤め人、学校帰りの女学生が、その空間を埋め尽くしていた。皆入り乱れて歩いており、しかもその地下道の長い距離に辟易とした。いったいここの空気は何を含んでいるのだか、妙な臭いまでする。プラスティックをあぶったような陰気な臭いだ。改札を出て、一刻も早く地上に出るべく歩みを早めた瞬間、前方から、口をぽかんと開けた制服を着た小学生が、まっすぐこちらに突進してきた。なぜか首を左右に振りながらこちらに向かって走ってくる。さっと体を引き、正面衝突を避けたのだが、その弾みに、左横にいたおばあさんに、軽くではあるが、体をぶつけてしまった。とっさに失礼と謝ると、軽く会釈をして反対方向に歩み去っていった。まさに昭和初期、昭和戦後世代、平成のぶっ飛び世代の一瞬の邂逅であった。渋谷駅の地下もそうだが、東京という街はもう発展する場所も意味もないのではないか。これだけの飲食店、洋服屋などがあふれかえっていて、しかも電気を惜しげもなく使っているように見受けられる。おかげで、用事を済ませる前に体の芯からくにゃくにゃになったような錯覚に襲われた。資本主義は、今年より来年、来年より再来年と利益を上げ続けなければならないシステムのようだが、もう限界に来ているのではないか。オレは東京ッこだい、などと粋な科白を言えなくなってきて久しいような気もする。おかげさまで、家の近所に帰ってきて飲んだアイスコーヒーは、食道あたりから既に水分を吸収しているようで、とても上手かった。何だか、季節的にも、やるせない日々が続く。
{皆様へ} 明日のピットインでの演奏では、CDの発売のみとなりました。ご了承下さい。